【カナダ・オンタリオ滞在 2022.10.21 】Godspeed

Godspeed

 翌日はGodspeedです。Godspeed Breweryを語るにあたっては、オーナー/ブルーマスターのLuc Bim Lafontaineの話をするのが一番でしょう。モントリオールのブルーパブDieu Du Ciel!2001年にブルワーとしてのキャリアをスタートさせたLuc2007年にヘッドブルワーに就任。彼のいた12年間の間にDieu Du Ciel!はどんどん人気を博し、カナダ国内で最高の評価を得るだけでなく、国際的な名声を得るようになります。その後日本に移住し、うしとらブルワリーの立ち上げに参画する傍ら様々なブルワリー/ブルワーに対して醸造指導を行い、日本のクラフトビールシーンのレベルアップに大きな貢献をした人物であります。

Godspeed_luc

(画像引用:https://gerrardindiabazaar.com)

 そんな彼がカナダに戻り、新天地トロントにて2016年に立ち上げたのがこちらのGodspeed Brewery。ブルワリー立ち上げ前から噂となり、トロントのクラフトビール界隈はざわついていたようです。そんなブルワー歴20年以上を誇り、Brewer’s Brewerとして業界内でリスペクトされるLucが辿り着いたのはドイツやチェコ、ベルギーやイギリスといった王道のヨーロピアンスタイル。
 本当に自分の飲みたいもの、すなわち派手ではないがより洗練され、バランスの取れたビール。素材に敬意を払い最高のバランスをするのが究極の目標だと彼は言います。彼のことを直接知る人も多いでしょうが、物静かで穏やかだが情熱的、細部にまでこだわりを持ち、人との縁を大事にする人物。黒いパンツに黒いシャツ、黒いブーツに黒いハットというブルワーのステレオタイプとかけ離れたスタイルとも相俟ってどこかアーティスティックな雰囲気を醸し出しております。
 また、日本の文化に影響を受けている彼は柚子やお茶など日本の食材を使用してビールに彩りを添えております。中でも近年はチェコのビール文化に傾倒。なんと、あのピルスナーウルケルから同社で使われているものと同じ木樽を輸入、この前日に搬入。今後はこちらを使用したピルスナーがリリースされる予定となっているほか、あのBudvarとのコラボレーションも行っております。で、この土日にはBudvarやチェコの大使館関係、チェコのビール原料や機材関係の業者等を招いたイベントが予定されており、この日はその前夜というわけです。


 夕方にLucと親しいタヰヨウ酒場の鳴岡さん、やはりLucと親しい白川さん、Brewccolyの筒井さんが到着するというので合流して乾杯をという予定。それまで時間があるのでプリペイドSIMを買うなどしに。ここまで動きっぱなしで身の回りのものなど何も買えていなかったのです。宿の向かいに格安キャリアのお店があり、10分で戻るとの張り紙があったのでドラッグストアに行ったりして再開を待っていたのですが一時間経っても再開せず。痺れを切らしてショッピングモールへ行き無事SIMゲット。と思いきや私のiPhoneはロックされていたようで使えず。。。格安キャリアにしたからロックされてないと思ったらされていましたわ。SIMは現地調達よりも日本のamazonで事前にゲットする方が安いし確実ですね。
 で、こちらのモールの近くにLCBO(オンタリオ州政府運営のリカーショップ)があったので覗いてみたんですが、品揃えはあまり面白くないっすね。この州政府によるアルコール類の統制がカナダにおいてビールのみならずアルコール類のシーンにとって功罪あって厄介なようです。

 

 気を取り直してGodspeedへ移動。ここまで訪れたBurdockBellwoodsブルーパブ、True Historyはトロント西部ですが、Godspeedは東にあります。電車とバスを乗り継いで到着すると、ブルワリーの周りはパキスタン街になっており、西の方の洒落たところとは一味違った雰囲気。敷地もゆったり目に取ってあります。中に入るともうすでに飲んでいるお客さんもそれなりにいますが、鳴岡さんたちを待つまで我慢。
 ルークは鳴岡さんたちを迎えに空港に向かっているのでブルワーの森君に工場を簡単に案内してもらいます。森振水君は気付いたら8年くらいの付き合いになるのかな?とにかく彼がビールの仕事を始める瞬間からの付き合いです。あんまり人付き合いが器用なタイプではありませんが、探究心と向上心、負けず嫌いとしつこさは人一倍。紆余曲折あり、散々苦労して掴んだ機会なので応援しております。ブルーハウスは2,500L仕込み、ファーメンターは5,000Lのものが8基、そしてチェコから輸入した4,000Lの木樽がどどーんと鎮座しております。

Godspeed_BreweryGodspeed_Brewery_Barrel

 ブルワリーの規模としてはBellwoodsのプロダクションブルワリーより一回り小さい感じですね。驚いたのがブルワリーの綺麗さ。もちろんどこも床や機材は綺麗にしてあるんですが、Godspeedはその上色々整理整頓されていて本当に綺麗です。これを二人で回しているというのだから、Burdockとは違った意味で驚きです。


 気づけば5時を回り、店内もかなり賑わってきましたがどうやら渋滞がひどいらしく、Lucがなかなか戻ってこないので仕事を終えた森君とフライングで乾杯。最初はBesutoから。その名の通りのBest Bitterで何も考えずにするする入っていきます。と、飲み終える頃にLucと鳴岡さんさんたちが到着。早速乾杯します。二杯目はOtsukaresamaBuhは以前飲んだものと少し印象が変わっていて、こちらの方が好みでした。Budvarバージョンとも飲み比べしましたがBudvarの方がややどっしりした印象。


 残念ながらシェフを探すのに苦労しているらしく、居酒屋メニューは現在ストップしてしまっていたため食べ物はピザを。これはこれで美味しいんですが、やっぱり居酒屋フードが食べたかったですね。日本の味が恋しいとかではなく、Godspeedのビールに間違いなく合うからでありまして。Godspeedのビールは最近のブルワリーのようにライト目に仕上げるのではなくどちらかというとスタイルに忠実なバランス感覚ですが、これが和食に合うはずなのです。というか、ビールだけでなく居酒屋フードと合わせて楽しむコンセプトですからね。


 で、実はトロントに来る前から確かめたかったのがフードでして。アメリカのブルワリーって基本的には何もないタップルームでひたすらビールを飲む、フードはフードトラックとかポップアップのフードベンダーから買うのが基本。もちろん食事の美味しいブルーパブもありますが、いわゆるアメリカンな食べ物が主流ですよね?僕たちの取引のあるところがそうなだけかもしれませんが、その点トロントのブルワリーってフードメニューにも工夫が凝らしてあるし、大袈裟なペアリングや流行の食べ物をぶつけるのではなくてデイリー以上スペシャル未満な食事と一緒に楽しむコンセプトを持っていたりするのだなと。ヨロッコの明生さんがダークラガーとサンマという組み合わせを提唱しておりましたが、Godspeedで色々をと試したかったんだよなー。。。ダークラガーも美味しかったし。それだけが唯一の心残りでしたが500mlのマグでひたすら飲み続けて気づいたら12時近くになっていたので退散。というか、当たり前のように500mlで飲めちゃうクオリティの高さとドリンカビリティ。7-8杯は飲んだんじゃないでしょうか。
 まあフードに関する心残りはそのうちタヰヨウ酒場さんでGodspeedイベントをやってもらってなんとかしましょうか!

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