InstagramのStoriesでも少しアップしていたのでなんとなく気がついている方もいらっしゃると思いますが、昨年10月下旬に2週間ほどカナダ〜アメリカへ行っておりました。勿論インポートの取引先訪問を含めたビールの旅でございます。
僕たちハリーメイがCollective Artsを皮切りにインポート事業を開始したのが2019年9月のこと。Collective Artsは毎年地元ハミルトンで大規模なインターナショナルビアフェスティバルを主催していたので、2000年6月に行って現地の様子を見たり、新規の取引先を開拓したりしようなんて考えておりました。しかし皆様ご存知のように半年も経たないうちに新型コロナウイルスの感染が爆発し、海外に行くことが難しくなってしまいました。まあメールやSkypeなんかでコミュニケーションは取れるし、そうやってコツコツと新規のブルワリーを開拓してきたものの、やはり現地に行かないとなーってウズウズしておりました。しかし徐々にパンデミックも落ち着きを見せ、海外渡航に関する規制も緩くなってきたのでようやく!6月にはアメリカに行き、そして今回は念願のカナダに行けました。
今回のメインの目的地は当ハリーメイの取引先ブルワリーの集中するトロントを中心とするオンタリオ州でしたが、そのほかにモントリオール、アメリカに渡ってニューヨーク州、乗り換えでロサンゼルスにもちょっとだけ立ち寄り。10月は気候もいいしタイミング的にもThe Counterさんより引き継いだGodspeedのチェコイベントがあったりしてピッタリ。気になっていたブルワリーや現地のビール事情などチェックしてまいりました。
LAでの乗り継ぎを含めて20時間近い長旅の末にトロントに到着したのは夜20時。この日は取引先であるBurdockのブルワリーレストランでオーナーのMattと軽く飲もうと約束しておりました。都合のいいことにBurdockは予約していたAir BnBから徒歩10分くらいのところ。Godspeedで働く森君が予定が空いているというのでお店の前で待ち合わせて予定より30分ほど遅れて到着。
元々ポルトガル料理店だったというこちらは我々が想像するブルワリーやブルーパブとはちょっと違っていて、ちょいカジュアルなレストランですね。コンセプトとか料理については事前知識があったのですが、想像していたのは飽くまでブルワリーのタップルームとかブルーパブの範囲内のもの。しかし実際は内装や調度品なんかも洒落ていて、普通にデートとかちょっと美味しいもの食べようかって行くようなカジュアルだけどちょっと洒落たレストランで、想像の先を行っていましたね。
テーブル席を通り抜け、奥のカウンター席に行くとMattと営業のAnthonyが待っていてくれました。二人とも物静かで落ち着いた印象です。まずはBloor Lightから乾杯。アルコール度数3.1%のライトラガー(正確にはLagered Ale)。確か米かコーンを使っていたと思いますが、ライトでクリスプ、でもしっかりフレイバーはあるっていうBurdockらしいビール。とある眼鏡屋さんがBurdockをCity Popに例えておりましたが、納得の例えだなと思います。カラフルだけど色彩は淡く、でも輪郭ははっきりした感じでアーバンなセンスを感じさせます。ライトラガーやサワー、ペールエールなんかはもちろんですが、HellesやDark Mildのようなモルティなビールもモルトのふくよかさはしっかり表現しつつライトかつアーバンに仕上げてくるのがツボにハマります。
こういうブルワリーってあんまりいないです。まあとにかく、どうやってこういうスタイルを確立したのかが気になっていたのでストレートに聞いてみると、彼らはワインのカルチャーから強い影響を受けており、食事とよく合うビールを追求してこうなったとのこと。やはりそうだったのかと非常に納得しました。コロナ禍真っ盛りの頃、ビールを飲むシチュエーションはガラッと変わりました。お店、特にビアバーで飲む機会は極端に少なくなり、自宅で普通の晩ごはんを食べながら飲むというのが殆どに。そうすると派手なビールよりもデイリーに飲めて食事の邪魔をしないシンプルなビールがこれまで以上に活躍するようになりました。ビール単体で華のあるものというより、食中酒って感じですね。そんな中、Burdockのビールは本当にピタッとハマったんですよね。
そしてBurdockといえばブドウを使用したGrape Aleも大きな特徴ですが、Mattは十年以上前にモントリオールのワインバーで働いていてワインのことを勉強したそうで、ワイン造りに畏敬の念を抱いているのがよく伝わってきました。そんな彼がとても尊敬しているのがナイアガラのワイナリーPearl Morissetteだそうです。少し前に輸入したBumoシリーズでのコラボレーションも記憶に新しいかと。もう在庫はないので気になった方はどこかで見かけたら買ってみてください。Pearl MorissetteはGodspeedのLucからも勧められたし、そういえばGodspeedでオンメニューしている唯一のワインでしたね。こういった話をしていてもMattの真摯で誠実な人柄がよく伝わってきます。
で、ブルワリーを案内してもらいに奥へ。ちなみに手前がテーブル席、入っていくとカウンターがあってその先にボトルの冷蔵庫があり、一番奥がブルワリーとなっております。なのでお客さんの大半はここにブルワリーがあるということに気づいていないそうです。ここで作っていることを売りにしていないのか、とこれもちょっとした驚きですね。
ブルワリーの方は1,000L仕込みでタンクも同サイズ。設備もシンプルでサイズも極小です。天井も低くてこの設備がギリギリのサイズ。ほんと、日本のブルワリーと環境的にもサイズ的にもよく似ていて親近感が湧きます。なんとこれを年間200仕込み(2日に一回以上のペース)でブン回しているというから驚き。それでよくあんなにクリーンなビールが作れるなと。
リリース前のビールもいくつか飲ませてもらいました。今度入荷予定のアルコール度数3%のドライスタウトと昨日ドライホップをしたばかりだというSuperfluxとのコラボのHazy IPA。前者はロースト感とボディ感をしっかりと感じさせつつ飽くまでドライでライト、後者はBurdockとしては異色というかSuperflux色の強いゴリゴリのHazy IPAでどちらも美味しかったです。しかしこんな小さな設備でよく輸出に回してくれているよなと思っていたんですが、実は今新ブルワリーを建設中でして。とはいってもいきなり生産量をすごく増やすとかでなく、余裕のある設備にしてゆとりあるペースで作っていくためのようです。特にフラッグシップのTuesdayはLCBO(オンタリオ州政府運営のリカーショップ)に入っていたりするし、あとラガー系は大量に作ってゆっくり熟成させないと効率悪すぎですからね。何よりブルワー二名で年間200仕込みは無茶っすね。
そういえばMattは伊丹十三監督映画『タンポポ』が大好きだそうで。「映画のラストでついにオープンさせたラーメン屋、かっこいいよね」と。確かにあれは時代を先取りするようなコンセプトのラーメン屋でしたね!で、週明けに建設中の新工場を見学させてもらう約束をしてお別れ。